劇場技術者の仕事

舞台進行(ぶたいしんこう)

 劇場技術全体を掌握して、舞台機構・舞台装置の管理と操作を主業務 とし、主催者・制作者・演出者と連携しながら、舞台照明・舞台音響と協調して円滑に劇場を運営する係である。美術進行を兼ねることも ある。舞台監督と技術監督の双方を兼ねている。

 

美術進行(びじゅつしんこう)

 公演期間中、開演前や場面転換のときに、袖幕や一文字、吊りバトンなどの舞台装置や大道具を設置する責任者である。場面ごとに、インカムやトランシーバーで舞台機構操作係に指示をし、大道具係を監督 するなどして、舞台美術全体を組み立てる。

 

舞台機構操作(ぶたいきこうそうさ)

 迫り、回り舞台、吊りバトン、緞帳など舞台床や舞台上部などに設置 してある設備を舞台機構という。その機構の操作スイッチが集合して いる部屋を舞台機構操作 室または舞台操作盤、略して操作盤などと いう。このスイッチを舞台の進行に合わせて操作する仕事を舞台機構 操作と呼んでいる。出演者等の生命にもかかわる ので、慎重に、タイミング良く、的確に操作しなければならない。

 

大道具(おおどうぐ)

 演出上必要とする建物、樹木、岩石などのことで、場面を表現する道具の総称である。

大木の枝を出演者が折る場合、木の幹や枝は大道具であるが、折る枝に限って小道具になる。   

 地面に置いておく小石は大 道具であるが、俳優が拾って投げる小石は小道具である。

 大道具係には製造する係と、舞台の進行に合わせて設置、撤去する係がある。

 歌舞伎の場合は、幕の開閉、つけ打ちも大道具係の仕事である。

 

小道具(こどうぐ)

 家具や屏風(びょうぶ)、役者の携帯品または装飾品、駕籠(かご)、自転車など俳優が使用するものは「小道具」と呼ばれる。

 役者が使用する器具、役者の携帯品などのことである。家の戸板は大道具であるが、それへ人を乗せる場合や立ち廻りに使用する場合は小道具 になる。

 小道具係は、演出意図に基づいて製造、調達をして、舞台進行に合わせて設置し、撤去をして、修理もする。

 歌舞伎などでは、舞台の天井から枯れ葉や花びらを散らすのも小道具係の仕事である。

 

かつら

 俳優の役柄に合わせた鬘を製造する係である。

俳優の一人ひとりの頭のサイズを採寸して製造し、俳優に着用させて最終調整をする。

 

床山(とこやま)

 完成した鬘の髪を役柄に合った形に結う係である。公演期間中は、俳優に装着、調整、修理、保管をする。鬘でなく、俳優自身の毛髪を結う場合は、ヘアメークなどと呼ばれる。

 

衣裳(いしょう)

 衣裳デザインに基づき、役柄に合った衣服を製造または調達して、公演期間中は着付けをし、修繕をする係である。

 

特殊効果(とくしゅこうか)

 舞台美術や照明に含まれない特殊な視覚効果の技術のことで、煙や火、炎、爆発などの効果を扱う係のことである。

 略して「特効(とっこう)」と呼んでいる。

 

照明(しょうめい)

 照明デザインにしたがって、照明器具や装置を設置して、操作をし、撤去する係。

 舞台で設置・転換をする担当、客席天井から演者の動きに合わせて照明を追いかける担当、場面に合わせて全体の照明を調整・変化させる 担当がいる。

 

音響(おんきょう)

 音響デザインに基づいて、セリフや楽器の音を拡大して音のバランス を調整し、録音されている効果音や効果音楽を再生する係。歌舞伎では、効果道具を用いて実際に生で演奏する。劇場では、技術スタッフや楽屋のモニターも担当する。

 

映像(えいぞう)

 CGやビデオ映像などの製作、操作を担当する係。

 

楽屋管理(がくやかんり)

 公演期間中、楽屋を管理して諸問題を処理する係。出演者が舞台裏で 安全に、快適に過ごせるように対処する。そのためには劇場全体の動きを把握していなければならない。

 

舞台管理(ぶたいかんり)

 舞台上の設備・装置が円滑に作動し、技術スタッフが問題なく機能しているかを管理する係。

 

設備保守(せつびほしゅ)

 劇場の設備が常に円滑に作動しているかをチェックして、上演に支障がないように、安全を保持できるように観察・修理をする係。